最近私は、思い出したように引っ張り出した写真集を眺めています。そんな写真集を紹介します。シリーズ化するかも。
第1回目の写真集は、JAN GROOVER(ジャン・グルーバー)です。
1943年アメリカ生まれの女性。ニューヨークのブルックリンにあるプラット・インスティテュートを卒業。グッケンハイム奨学金を受賞。2012年に没。
残念ながら、お会いしたことは無し。
この写真集は、1993年に発行です。ちょうど私がニューヨークにいたころ。
ジャンの写真で有名なのは、表紙にもなっている「キッチン用品のクローズアップ」のシリーズです。写真集には、初期の風景写真や人物を撮影した写真もあります。しかし、全般的に「画面構成」することが彼女の視点にあるので、被写体の部分クローズアップとか、それらを複数で構成する、という手法がとられています。
主にキッチン用品のクローズアップを撮影してきた彼女ですが、それはカタログ風味な写真とはまるで違います。カタログ風味視点の静物写真とは、写っているフォークやスプーンそのものの美しさを求めることで、クローム色に輝く金属の質感を表現しなければなりません。つまり、彼女の写真を仮に広告写真の課題として提出したら、絶対にAはもらえません。
ジャンの写真に登場する食器達は、おそらく彼女自身が日常的に使っているもので、モノとしての形から造形美を構築することにあります。食器の「表情」を捉えて、画面を構成して写真にしています。まるで、使い終わって食器洗い機のカゴの中で勢いある温水に洗浄されたナイフやフォークが重なり合っている様子をスーッと拡大してみているような感じであり、また、次にいつ使われるのかを食器棚や引き出しの中で待っているザラッとした感じです。
で、なんでジャンの写真集をふっと手に取ったかというと、繰り返し繰り返し同じ食器が出てくる、それも日常を囲っている道具の中に美しさの構成を見出す彼女の写真は、現代風に見ると、とってもインスタグラマーな視点だなーって思い出したから。
ということで、おんもは寒くなる(まぁ、私的には活動しやすいけど)し、ぬくぬくなお家の中で、テーブルフォトもやってみようかなと思ったので、しばらくはジャンをインスパイヤした写真を撮ってみたくなったのでした。