日本経済新聞に記事が出たそうです。と言っても「じゃないの?」の域を抜き出ていない感がある文章のようです。なぜなら両社共に発表したわけじゃないし、ソースが日経記者の想像という、飛ばし記事の雰囲気がバリバリしております。
とは言え、先月発売のSONY α7 IIIの販売傾向は超好調のようですから、危機感を両社が持っていることは確実じゃないかと言えそうです。
ただし、両者にはビックな問題があります。それはマウント形状ですね。
キヤノンは、MF時代からAF時代へのステップアップとして、FDマウントをEFマウントへあっさりと変換し、その後躍進しました。ニコンは、一眼レフ登場時の「ニコンF」の時代からのFマウントを頑なに守り続けて、なんとか知恵を絞りながらAF対応してきました。
問題とは、数十年間売ってきた、それこそ「累計1億本」とか言って宣伝してきた「一眼レフ専用設計のマウント」を継続するのか、新しいミラーレス用のマウントを用意するのか、ということです。これは非常に大きな問題。
キヤノンにあってニコンにないものというと、キヤノンにはすでに動画分野でそれこそ本来の意味の「ミラーレス」な動画用カメラをEFマウントで作っています。例えば「EOS C300」など。なので、ある程度のスチルカメラ用レンズをミラーレスボディ化するための技術は持っていると言えるのではないでしょうか。
となると、本当に記事のようにキヤノンやニコンが「フルサイズミラーレスカメラ」を開発し販売する場合、次の3パターンが想像できます。
1、完全新マウントでミラーレスカメラを作る
これができれば「漢」ですな。なぜなら、現在のユーザーをそれこそFDマウントの終了と同じような「ユーザーからのバッシング」に耐える心を持たなければなりませんから。そのためにも、そして過去資産を生かすためにも、従来からのレンズについては、シグマのMC-11のようにマウントアダプターを販売して使えるようにすることが必須。そして専用設計の、つまりフランジバックが短くなることでレンズ設計の自由度が増し増しなので、新しいレンズを作っていかなければならない。すなわち、非常に大きな投資が今後も必要になってきます。これはソニーと同じ道ね。
2、言葉通りの「ミラーレス」カメラを作る
ざっくり言えば、シグマの「sd Quattro」やそれこそ動画の「EOS C300」のようなミラー部分を取っ払って空洞にしてミラーレス化した一眼カメラという設計です。この設計自体は、現在も一眼レフカメラでもライブビュー撮影といったミラーを跳ね上げて背面液晶で確認して撮影という技があるので、一番楽でしょう。ただし、ミラーレスタイプの特徴である「フランジバックが短いことで性能をあげることができるレンズ設計」が遅れます。一時的にはこの方法で逃げられますが、そのうちマウントの変換が求められてしまうことでしょう。
3、一眼レフとミラーレスのハイブリッドカメラを作る
ニコンはこれを選択しそうな気がします。つまり、ファインダーに液晶を投影表示させるような形でOVFとEVFのハイブリッドファインダーにしておくわけね。これなら一眼レフとしても撮影できるし、ミラーを跳ね上げてEVFに切り替えてミラーレス風味なシャッターコマ数のアップとかのメリットのみを享受させると言った設計ということ。これならば、マウントを変更させる必要はないし、一眼レフとしての今までを捨て去ることなく進むことができます。ただし、これもやっぱり「もうミラーはいらないんじゃねーの」という方向が進むと、どこかで転換を図るしかない状態に陥ります。
という3タイプね。
そしてもう少しの問題点があるとすれば、ソニーにはすでに4つのフルサイズラインナップがあるし、加えてベーシックモデルと言っているα7 IIIが上級機種並みの機能を搭載しちゃったもんだから、同等かそれ以上の機能を搭載したエントリー機とフラッグシップ機の2パターンを作っていかないといけなくて、レンズ以外にも重いとても重い開発費が両社には確実にのしかかってくることでしょう。
どの道を辿ったとしても体力次第だけど、指を咥えてミラーレス軍団を眺めているわけにはいかないキヤノンとニコン。さて、ユーザーのことはさておき「我が会社がこれから作る機種がナンバーワンなのだ」と言い切って新しいマウントで設計しているのか、それとも先延ばしにするのか。
そして2020年の東京オリンピックは、一眼レフとミラーレスのどっちで勝負をしてくるのか。あと2年しかありませんよ。
正直なところ、センサー設計はするけど自社で作ることができない、動画に対する多少の技術は持っているけれど本格的な動画機を作ったことがないニコンにとってミラーレスというジャンルをものにするには、とっても苦しい道のりが待っているだろうなと思います。加えて、AF全盛期を見据えてもなお小さい口径で距離の長いFマウントを維持してきた社風があるので、ミラーレスのために方針を変えることができるのかがポイントですね。
ミラーレスの技術も、動画の技術も持っていて、センサーの自社開発ができるキヤノンは、一歩先を行ける可能性はあります。加えて、先の通りあっさりとマウントを変更した歴史もあります。んが、果たしてソニー並み、いや、ソニーを超える技術を導入したカメラを作ることってキヤノンにできますかね。私は元ユーザーとして残念ながら懐疑的です。なぜなら、ユーザーが「こうして欲しい」「ああして欲しい」と言った声をあまり聞き入れた開発をしてこなったというイメージがキヤノンにはあります。偏見かもですが。それとミラーレスに様々なメリットがあることは、フルサイズ以外のミラーレスカメラも発売しているキヤノンならわかっているはずですが、それでももっと早い段階での導入に踏み込めなかったことか今日の今日まできているわけですから、FDマウントを切り捨てた時のような判断ができる経営者がいるのかどうなのか。
ま、現在ソニーのミラーレスを使っている身としては、いくらシェアで上回っているキヤノンとニコンが完全なるフルサイズミラーレスカメラを出してきたとしても、一緒に高性能なレンズ数本が出るとは思えません。ということは、今でも「デジタル専用設計」で発売できていないレンズを抱える両社なので、新たなジャンルであるミラーレスを抱えたとしても、レンズ開発というリソースに相当の力を入れることはかなり難しいのではないかと思っちゃうわけです。つまり、出しても先行のソニーを超えるような存在になることは、相当難しいことを意味しています。
あー、そうか。
もしもキヤノンとニコンが完全なるフルサイズミラーレスカメラを発売した場合、ニンマリするのは、シグマってことかもしれませんね。
ILCE-7RM2 + Canon 50mm F0.95